「私の息子はまだ2歳なのに、もうiPadと携帯電話を使いこなせるの!まだ話したり読んだりはできないのに、自分でYouTubeでお気に入りの曲を見つけるの。なんて賢いのかしら。」そんなことを誇らしげに考えていたら、あなたは大きな過ちを犯しています。あなたの子供がiPadの天才であったとしたら、あなたは実は重大な問題を抱えているということです。幼児のスクリーン中毒は決して自慢に思うようなことではありません!
長時間のデジタルスクリーンの使用は社会能力や言語能力、子供の発達を妨げます。
現状

「1日あたりの平均時間は60分です。」と国立大学病院(NUH)子供発達センターにて顧問を務めるアイシュワリヤ・ ラムクマール博士は語っています。
この数字は増加し、2歳までに10人中のほぼ9人の子供が定期的なスクリーン時間を持ちます。これが、幼児におけるスクリーン中毒が深刻な問題であることを明示しています。
そしてこの数字よりさらに憂慮すべきことは、この問題に対する親の意識の低さです。なんと調査した中の親の20%のみしか、専門家による子供のスクリーン時間のガイドラインに関しての知識を持っていませんでした。また多くを占める40%の親が子供のスクリーン使用時間を常時監視していません。
2010年に発売されたiPadと、タッチスクリーンを搭載するモバイルデバイスの流行がこの世代の子供の幼少時代を大きく変えました。
どうしてこんなことが起こるのか?

ほとんどの親は、生まれてくる子供にスクリーン時間を持たせないと心に決めます。幼児のスクリーン中毒は、彼らにとっては思いもよらないものです。
しかし、実際には物事は必ずしも計画どおりに進むとは限りません。子供たちを完全にガジェットやデジタルスクリーンから遠ざけることは、ほぼ不可能といえます。第一、たとえテレビや、携帯電話の使用を家庭で厳しく禁止をしていたとしても、結局友達や親戚によって経験することになるのです。信じてください、これは本当に起こります!
他の例として、親がメインで子供の世話をしていない場合に問題となります。お手伝いさんや祖父母に指示や希望を明確に伝えてあっても、必ずしもそれに従うとは限りません。
お手伝いさんは自分の仕事を楽にしたいと考えるかもしれませんし、祖父母は子供の活動エネルギーについていけないかもしれません。
また共働きの家庭の場合、疲れに負けてスクリーンを子守り代わりに使うこともあるでしょう。
ごくごくありがちなことです。スクリーン時間をゼロまで完全に制限するというのは理想主義的で同じで、負けるとわかっている試合をわざわざしているようなものです。大事なことは、デジタルスクリーンへの露出時間を管理し、その中毒症状を防ぐことです。
幼児におけるスクリーン中毒の悪影響

ジャック(仮名)の例を見てみましょう。ジャックは歩いたり話すことを学ぶ以前に、タッチスクリーンのガジェットを使いこなすことができるようになりました。1日30分間のスクリーン時間から始まり、2歳になる頃には1日6時間にまで急速にエスカレートしました!幼児のスクリーン中毒とはまさにこのことです。
NUHの子供発達センターのシニアコンサルタントであるジェニファー・キーン博士は調査時のことをこう言っています。:
ジャック(仮名)は意味のある言葉を持たず、アイコンタクトもしない、自分の名前への反応すらままならず、さらに短い時間しか集中力を保てませんでした。
同じようにスクリーン中毒の影響に苦しむ子供が多く存在します。シンガポールにおけるタッチスクリーンの影響を示す正式な統計はまだ知られていませんが、スクリーン中毒の悪影響は次々と報告されています。
この未就学児童グループにおいて見られる最も深刻な発達問題としては、言語や社会的能力の発達の遅れです。
最高経営責任者(CEO)であり、かのジュリア・ガブリエル教育で校長も務めるフィオナ・ウォーカー氏は、近ごろの保育園に入る前の子供たち(3歳未満)は自分自身を表現するのが苦手なようだ、と語りました。
こういったことは、子供達の入園前に教師間で行われた非公式の話し合いでも聞かれました。この話し合いは、子供達の会話能力を測る目的で行われ、過去2年間、子供達が以前の世代に比べ口数が少ないという傾向があるという意見が交わされました。
専門家達は、幼児のスクリーン中毒が抑制されなければ、乳幼児の発達と健康に長期的な影響を与える可能性があると考えます。
親はこのことを心に留めておくべきです。人生の最初の3年間に新生児の脳は、三倍の大きさまで成長し、その間の経験が成人の脳の形を決めます。こういったデバイスの使用は、子供が対話型の世界を知るという利点があるように見えるかもしれませんが、それは非常に短絡的な考えです。子供達は、毎日の身近な世界との対話から切り離されていっているのです!
スクリーン時間は、子供の身体的、また精神的健康に影響を与えます。まったくもってこれに尽きます。それ以下でも、以上でもありません。その影響を覆すことも、運動で補うこともできません。子供に10時間の運動時間を与えても、10時間のスクリーン時間の悪影響を中和することはできません。そんな簡単なことではないのです!
見て見ぬふりをしますか?
デジタル技術の普及を考えると、2歳未満の子供のスクリーン時間を完全になくすべきかの意見が相反し存在しまています。米国小児科学会(AAP)などの機関は、彼らのスクリーン時間に対する立場を緩和していますが、下記のキーン博士のように考える人もいます。
2歳未満の子供の生活にデジタル技術は必要ありません!
スクリーン時間ガイドライン
スクリーン時間をゼロにするかどうか、その選択はあなた次第です。しかし、幼児のスクリーン中毒を防ぐために、AAPの役立つガイドラインがあります:
18カ月未満の乳幼児 - ビデオチャット(家族のだれかと)以外のスクリーンの使用を避ける
18〜24ヶ月の幼児 - 良質なプログラムの選択。親は子供と一緒に見て、見るものの理解を助けます。
2歳から5歳までの未就学児 - スクリーンの使用を1日1時間に制限し、良質のプログラムのみにする。親は子供たちと一緒に見ます。
6歳以上の子供 - メディアの種類や、使用時間に一定の制限を設け、適切な睡眠や運動、健康に不可欠なその他の活動を妨げないようにします。
幼児のスクリーン中毒の兆候

予防は治療に勝るといいますよね。幼児のスクリーン中毒の予防に可能な限り務めましょう。すでに子供が過度にスクリーン時間を持ってしまっている場合、キーン博士は、これらの兆候に気をつけるよう呼びかけています:
- デバイスを取り上げると、嫌がったり怒り出す
- 電子機器を使用する機会を可能な限り探している
- スクリーン時間がなくなると、癇癪を起こしたり攻撃的になる
- やめさせようとするともう少しだけ、とねだる
- 学校での評価が低下する
- 注意が散漫になる
ママ、パパ、覚えておいてください。とキーン博士は警告する。
「デバイスをスライドして4桁のパスワードが入力できる幼児は、天才ではありません。きちんとスクリーン時間を管理しなければ、その子供は言語能力の遅れや、注意欠落障害、認知障害を引き起こす恐れがあります。
幼児のスクリーン依存は、現実に増加している問題なのです。あなたの役割は、子供をそれから守ることです。
出典:Today